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不動産取引シリーズNo.2 高齢化社会における不動産市場活性化のための各種施策

1.空き家対策特別措置法(空き家法)成立 2015年(平成27年)5月

その後、2023年3月3日に閣議決定された「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」では、所有者の責務がさらに強化。現行の「適切な管理の努力義務」に、国、自治体の施策に協力する努力義務が加わることになります。上物があると、土地の固定資産税が軽減されましたが、空き家が増えた結果、成立した法律でした。特定空家(放置しておくと危険)を自治体が認定することで、軽減税率の適用がなくなり、固定資資産税が6倍、又、罰金50万が課されることもありますが、固定資産税の低い田舎では機能しませんし、実際に実施された事例を聞いたこともなく、この制度が浸透するに至っていません。

2.相続登記の申請が義務化 2024年(令和6年)4月1日より開始

所有者不明の土地を減らしたい。相続(遺言も含む)によって不動産を取得した相続人は、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければならないことになります。2024年4月1日以前の相続も対象です。正当な理由なく相続登記を怠ると、10万円以下の過料が科されることがあります。

3.相続土地の国庫帰属制度 2023年(令和5年)4月27日より開始

所有者不明の土地を減らしたい。相続が発生した際に要らない土地を相続したくない場合に、相続放棄(相続財産全てを放棄)することなく、不要な土地だけを手放すことが可能となりました。相続等によって土地を取得した相続人が、一定の要件のもと、土地を手放して、国庫に帰属可能とする制度です。国に土地を買い取ってもらうのではなく、相続人が、お金を払って国に土地を明け渡し、管理してもらうという制度です。10年分の土地管理費を納める必要があるので、有料の不用品回収と同じ制度と言えます。また、制度を利用するには、法務大臣(法務局)に承認申請し、調査を受け、国が引き取ることが出来る土地でなければならず、審査手数料が土地一筆辺り14,000円、10年分の管理費用の負担金が20万円~と、承認を受けるハードルは、かなり高いと言えます。

4.農地取得の下限面積要件廃止 2023年(令和5年)4月1日より開始

農地の売買・貸借の権利を取得には、農業委員会で耕作面積が下限面積以上になることが設定されていました(農地法3条)が、この農地法が改正され、下限面積が廃止されました。下限面積は、各市町村の農業委員会が定めてきました。30aなど農地面積が一定以上確保されないと農業が許可されなかった従来の下限面積の要件が撤廃されました。

5.不動産取引(売買契約・賃貸契約)の電子契約が解禁 2022年(令和4年)5月1日より開始

従来の膝を突き合わせて行ってきた契約形態から、電子契約で在宅契約も可能となりました。これにより、売買での印紙税も不要となるメリットがあります。将来の流動化には一助になるかもしれません。

最後に.親が亡くなって実家を相続したが、自分は都会に家があるので実家には住めない。処分したいが地方の不動産市場は冷えきっていて売るに売れず、やむなく空き家のまま放置。この結果、日本の空き家率は約14%。7戸に1戸が空き家です。中山間地域の空き家率は30%と更に深刻です。不要な土地を国に引き取ってもらう(上記3番)ことも可能になりましたが、10年分の土地管理費を納める必要があります。そこで、問題の解決策の一つとして出てきたのが「無償譲渡」、すなわち0円物件。元の持ち主が何らかの負担に耐えかねて手放す物件なので、問題あり物件ですが、実際に多くの人の申し込みがあり、当たった人は退職後の地方移住や家庭菜園、DIY、アウトドア活動などに活用しているといえます。持っていても損になる「負」動産が、うまくマッチングできれば何らかの価値を生み出す「富」動産に変わる、とういうことです。安く手に入る反面、安易に売却または放置され、さらに、問題が深刻化されることが危惧されます。不動産を含め、物ことは、正当に評価され、次の代にも受け継がれていくのが理想です。ここ30年間で一般家屋の空き家は約3倍近く増加しています。深刻な問題を解決するには、まだまだ、道半ばです。

不動産営業本部

長田郁彦

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