6月、社員研修として大阪・関西万博会場を訪れました。
まず注目したのは、会場の象徴とも言える「大屋根リング」です。直径は約615mにも及び、木造建築としては世界最大級のスケールを誇ります。この大屋根には国産木材が多用されており、中でも高知県産のスギやヒノキが全体の約4割を占めていることに、喜びと誇りを感じました。高知で建築に携わる私たちにとって、地元の木材がこのような世界的な舞台で活用されていることは、大きな励みになります。構造面で特に印象に残ったのが、CLT(直交集成板)の積極的な採用です。CLTは、複数の板材を直交するように貼り合わせた構造材で、耐力性や施工性に優れるだけでなく、木材ならではの温もりを感じさせつつ、スピーディな施工を可能にする点が特長です。弊社ショールームでも採用している素材であり、今回の大屋根リングでは、床・梁・壁などさまざまな箇所に使用され、CLTは現代木造建築の可能性を大きく広げる素材であると再認識しました。
さらに注目したのが、貫工法を現代的に再構成した「鋼製貫接合」です。これは、伝統的な木造技術である貫接合を鋼材で補強することで、木材の断面欠損を抑えつつ、高い耐力を実現する技術です。加えて、木材と鉄骨を組み合わせたハイブリッド構造は、美観・強度・環境性能を高次元で融合させており、設計思想としても学ぶ点が多くありました。今回の研修では、木材の活用技術の最前線に触れながら、地域資源の可能性と木造建築の未来を体感する貴重な機会となりました。
万博の建築物は、会期6カ月という限られた期間のため解体・再利用を前提とした設計がされている点もとても印象的でした。中でも興味深かったのは、トイレ棟における木材の仕上げ方法です。内外の仕上げ材にビスやボルトで穴を開けることなく、木のブロックで押さえるかたちで固定されており、材料を傷つけることなく取り外し・再利用できる工夫が施されていました。一見目立たない細かな部分にも、環境への配慮や工夫がしっかりと感じられ、建築に関わる立場としてとても心に残りました。